2012年2月10日金曜日

記者会見


企業とメディア(またはメディアを通した顧客や市場)とのコミュニケーションツールは非常に多様化してきて、案件や相手に応じた対応が求められていますが、広報にとって、記者会見は表舞台としてはもっとも重要でインパクトのあるコミュニケーションであることは変わりない。会見のスタイルも企業の文化や状況を表現するし、社内から見ても会見上手なエグゼクティブは頼もしいし、会見で失敗したら間違いなくスカタンに言われています。

20代の頃の7-8年は、メディア側にいて、多くの記者会見に出席しました。いまとなって活かしている勉強になった記者会見がいくつもあります。

当時のJALは広報の社員が受付をしていました。社員なので普段おつきあいしている記者さんの名前がわかります。その場でこんにちわ、お久しぶりですねーなどと話して席に案内する。人員に余裕がないとできませんが、素晴らしいと思いました。

トヨタの会見も圧巻でした。ホテルの宴会場にドンとクルマが入れてあって、世の中にこんなに記者さんがいるのかと思うほどの人がいて、やー、すごい人だったよーというのが一つのメッセージになります。エグゼクティブのスピーチに、" これからも、トヨタは自動車事故ゼロの社会を目指して、xxxxx " と、社是というか、売り上げナンボというより、企業がどう社会に貢献したいのかのメッセージがすごく印象に残りました。

エスティ ローダーの広報のトップは私が広報人として最も尊敬する鈴木ハル子さんが長年務めていらっしゃって、発表会はいつも素敵なスペースで、高級化粧品にふさわしい優雅な雰囲気が演出されていました。お土産がいつもゴージャスで、これは、ローダー夫人の" Empty Handsでお客様を帰してはいけません" というご方針が継承されているのだそうです。

一方で、会見というよりはプレス向けのパーティでしたが、お預かりしていたコートのラックが壊れて倒れて、バッグもコートも番号札もバラバラになり、会場を出るのに4時間かかったパーティがありました。翌日広報の皆さんは参加者皆さんにお詫びに出向いて回ったそうでありますので、その対応も勉強にはなりますが、いまでもコートと荷物をどうするかをまず考えます。そのパーティの話もしつこく代理店さんや会社の若者に話します。どんな会見もパーティも台無しになります。

広報の最初の経験はマイクロソフトでした。会社に入って2週間でウイルスに関連したクライシスを体験しました。当然失敗して、会社に大損害を与えました。出版社で自分は仕事がものすごくできると思ってたのですが、この会社の9割以上が自分よりもアタマのいい人の集団だということに気づきました。この会社には自分がしゃべらずとも自分以上によく話せて、しかもプレゼンテーションソフトの会社なのでプレゼンがうまいひとがたくさんいました。会社のなかであいつはプレゼンがうまいとかヘタとかが会話の中に普通にあって、プレゼンがヘタなひとで仕事ができるひとはあまりいないような気がしました。
当時はPCといえばWindowsだったから、社会への責任感みたなものも社員はとても強く持っていたと思います。いいニュースのインパクトも派手だけど、問題が起きた時のバッシングもハンパじゃない。なので、製品が出た時だけ会見するんじゃなくて、日頃からこれと言ったニュースがなくても定期的な勉強会を開こうという動きにしたのは、友人もある現広報部長の功績だと思います。

グーグルも衝撃的でした。なんて簡素なんでしょうw 入社した当初は、もともと会見が好きじゃなかったのかもしれません。少人数でラウンドテーブルを社内の会議室でさくっとやったり、部数やリーチは小さくでもTechメディアを非常に大切にしていました。正直私はあんまり理解できなかった。でも、グーグルは技術の会社だから、やはり技術者たちが触れる媒体にきちんとフェアな情報が載っていないとやはりダメなんだと後になってすごく理解しました。
それでもグーグルがものすごく伸びた時期だったから、あらゆるメディアであらゆる経験をさせてもらいました。

マイクロソフトの月例勉強会と、総理大臣の毎日のぶら下がりをアレンジして、毎週の定例記者会見というのをやっていました。毎週なんて続かないとかリソースを食うとか色々言われたんだけど、とにかくひとりで毎日のようにラウンチがあるので、記者さんとのコミュニケーションの時間がない。なので、毎週この時間に会社に来ていただければ、担当者もいるし、ご自由にぶら下がってお話ください、という会にしました。ランチも出した。それまでグーグルは配布物をしなかったけど、関連資料も配ることにしました。広報側としてよかったのは、そこではカジュアルにコミュニケーションできるので、記者さんの名前も覚えられるし、だいたいどんな角度で質問するかが個別にわかるので、こちらも相手を知るのにいい場所であるということです。(現在は広報も複数いて、十分なビジビリティなのでやってないと思います)

YouTubeをグーグルが買収して、YouTubeに関連した記者会見を何度もやりました。いまではこんなにメジャーになって陰ながら感慨深いですが、当時は著作権問題に関連してまったく笑えない状況でした。YouTubeをやる前は、国内の企業がGoogleとなにかすることの広報は、あまりGoogle側のメリットをよく見いだせてなかったのです。担当者はパートナーに広報約束しちゃってて、立派なプレスリリースができあがっている、Googleのビジネスは基本的にパートナーありきだから、全部やってたらきりがないと。しかし、YouTubeの広報については国内のパートナーさんに非常に助けられました。日本語話せない外国人が日本人の奥さんのおかげで街の人とコミュニケーションできた、という感じで、そういえば、マイクロソフトもどっかの大学が何かを採用しましたとかやってたなーと後になって思い出しました。

テスラに入って、やはりトヨタさんやパナソニックさんに大きなサポートをいただいています。ITのときと違って業界に歴史があるので、記者さんとのコミュニケーションもお約束が結構あります。最初の会見ではあきらかにスペースに対してご来場が多いと思ったので、最初から椅子なしでやりました。クルマの会見で椅子なしというのはまあ、ありえないそうでw。ジャーナリストのかたは基本クルマで移動されるので駐車場があるところでやったほうがいいとか、もろもろひとこと届けておいた方がいいこととか、ご出資もいただいてさらにアドバイスもいただいているというw 

で、今日の記者会見は椅子を入れました(自慢)。米国で会見をするというので、ウェブキャストで中継してくれと頼んで、同時通訳を入れてショールームでウェブ会見となりました。諸先輩はネットつながらなかったらどうするんだと、リスク高すぎるということでしたが、思い切ってやってみて、非常によかったと思います。
課題は同時通訳。機材のお金が本当に高い。続けていくにはここの解決が必要だと思います。あと、One Way じゃなくて、こちらから質問できるような回線にできるようにしたいです。これは次回の(予算的)課題。

写真は記者会見の3種の神器 --- 資料、コーヒーまたはお茶(両方準備が必要)、軽食。